「青年海外協力隊に参加したい!」と言ったら、
「危ないし、やめときなよ。」とか
「日本に帰ってから就職先ないよ。」とか
「結婚、あきらめるんですね。」とか…
言われたことありませんか?
私は青年海外協力隊に参加することを同僚や友人、家族に伝えたとき、これらの「やめとけ」を言われた経験があります。
そして否定的な意見を押し切って参加しました。
結果として日本では絶対に味わえない人生経験ができて良かったと思っています。
周りの人が「青年海外協力隊はやめとけ」という理由は何なのか、そして実際に参加した協力隊員がどうなっているのかを紹介します。
協力隊に参加したいけど周囲から反対されて悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてみてください。
「青年海外協力隊はやめとけ」と言われる6つの理由
「青年海外協力隊はやめとけ」と言われる理由は以下の6つです。
- 青年海外協力隊で派遣される国は危険
- 英語が話せない
- ボランティアだから自腹を切って生活する
- 帰国後、就職先がない
- 社会不適合者になる
- 結婚できない
「青年海外協力隊はやめとけ」と周りの人に言われるのは
「海外に行くのは危ない」と心配して言っている事がほとんどです。
それに加えて社会復帰や結婚など、帰国後の暮らしが想像できないのもあり、
「やめとけ」
と言われるのでしょう。
海外暮らしを経験した人って少ないですもんね…。
またテレビを観ていて、海外で働く人は青年海外協力隊の経験者が多い事から、
「協力隊に行く人は、日本社会に戻れない社会不適合者なのかな?」
と思う人も中にはいるかもしれません。
私の経験をもとに、6つの「協力隊はやめとけ」について、実状を以下より解説していきます。
青年海外協力隊で派遣される国は危険?
家族や友人から「途上国なんて危ないからやめときなよ。」と言われることが多いと思います。
あなたの身の安全を心配しているのでしょう。
結論から言います。
確かに日本よりも犯罪や事故に遭いやすいです。
しかしJICAの安全対策と個人の防犯意識があれば安全に過ごせます。
世界各国の犯罪率
青年海外協力隊員は世界92か国に派遣されています。(2022年までの実績)
派遣される国はアフリカや東南アジア、中南米地域など、ほぼ発展途上国です。
下の図は2022年の世界各国の犯罪率を色で表したものです。
緑側が安全、赤側が犯罪率が高いことを表しています。
出典:NUMBEO-Crime Index by Country 2022
青年海外協力隊が派遣されているアフリカ地域や中南米地域は犯罪率が高いことがわかります。
実際に青年海外協力隊員が遭いやすい被害は以下です。
- 空き巣
- スリ
- 性犯罪
- 誹謗中傷
- 交通事故
- テロ
JICAと個人の安全対策で危険を減らす
私は2年間、ヨルダンの地方都市で生活をしました。
実際にセクハラや誹謗中傷、交通事故に何度か遭いました。
しかし命に関わるような犯罪に巻き込まれずに帰国できたのはJICAに守られていたことが大きいです。
JICAは以下のことを安全対策として行っています。
- 防犯指導
- 治安情報の提供
- 安全対策アドバイザーの派遣
- 連絡手段の確保
- 防犯・防災施設の確保
- 防犯グッズの貸し出し
協力隊員の住居はJICAと相談して決める
生活の拠点となる住居は一番安全でなければいけませんよね。
住居の選び方は、
- 過去に協力隊員が住んでいたアパート
- 協力隊が滞在していたホームステイ先
など、過去にJICAボランティアが関わったアパートから選ぶことが多いです。
なぜなら、大家さんとすでに信頼関係が築けている場合が多いからです。
住居が決まったら、現地の安全対策アドバイザーが確認に来ます。
防犯対策が十分だと判断されれば、正式に契約・入居です。
場合によっては警備員が配置されることも。
その費用もJICAから支給があります。
JICAは早めに撤退命令を出す
テロや治安の悪化、感染症などで協力隊員の身が危険だとJICAが判断した場合、
自宅待機や首都へ避難、帰国などの命令がかなり早い段階で出ます。
例えば、新型コロナウィルスの感染拡大が始まった時のことです。
2020年3月にはすべての青年海外協力隊員が一時帰国しました。
結果として世界的な感染拡大になりましたが、この頃にはまだ感染者が出ていない派遣国もありました。
2020年3月の対応についてJICAは以下のように説明しています。
“派遣先には医療体制が整っていない地域も多く、移動制限を始める国もある中、万が一の事態に備えて、隊員の健康を考えた予防的な措置だ”
青年海外協力隊 全員一時帰国へ 新型ウイルス影響 より
新型コロナウィルスの対応をみても、隊員の安全を守るため早期に決断をしていることがわかります。
JICAとのルールを個人が必ず守る
派遣国によって違いますが、JICAとのルールもあります。
私が派遣されたヨルダンでは以下のルールがありました。
- 任地を離れる場合は移動届を提出
- 日没後の外出禁止
- 毎日定時に安否確認の連絡
- 国境付近やテロが起こった場所への移動禁止
たくさんの決まり事がありますが、危険を回避するために個人がJICAとのルールを守ることが重要です。
危険な目にあう原因は油断
発展途上国で暮らすことは日本よりも予測できない事もあり、危険なことが多いです。
しかし慣れてきたころに気が緩んで、犯罪や事故に巻き込まれることはあるあるです。
だからこそ、
- 施錠を必ずする。
- 危険な場所は避ける。
- 他人をすぐ信用しない。
- 無理な道路横断はしない。
など、日本の生活でも当たり前のことに気を付けていれば派遣国でも安全に過ごせます。
英語が話せないと合格や活動は難しい?
青年海外協力隊は英語が話せなくても合格できるし、活動もできます。
なぜなら青年海外協力隊の選考は、中学レベルの英語力があれば合格できるためです。
しかも派遣国に合わせて、英語以外の言語を派遣前訓練で学習する隊員の方が多いです。
協力隊の語学力審査は英語資格の提出のみ
一次選考の応募時に、英語資格の提出が必要です。
- 英検
- TOEIC
- TOEFL など
これらの英語資格が中学レベル以上であれば応募できる国や要請がたくさんあります。
面接で英会話を求められることは無いため、英語が喋れなくても大丈夫です。
英語力の詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
応募に必要な4段階の英語レベルと、応募できる派遣国をまとめています。
派遣前訓練と派遣先の学校で語学習得
青年海外協力隊は約2か月間の派遣前訓練があります。
訓練期間中、協力隊員が派遣国で必要とされる言語を基礎からしっかり学びます。
アルファベットの書き方から発音、文法、会話など、ゼロからスタートです。
派遣国も様々なので、言語クラスも多いです。
- 英語
- フランス語
- スペイン語
- アラビア語
- タイ語
- ラオス語
- ネパール語 他多数
マイナーな言語クラスまで多数あります。
6人前後の少人数クラスに分けられ、ネイティブの先生による授業を受けます。
さらに派遣国の語学学校にも2か月ほど通って、現地の言語を習得していきます。
例えばアラビア語など、初めて習う言語の場合、
派遣前訓練と語学学校の計4カ月間の学習で
- 簡単な自己紹介
- レストランでの注文
- ショッピングでの会話
- 道案内
など、習った言語で少し会話ができるようになります。
そのため、青年海外協力隊の応募時に英語が話せなくても、全く問題ありません。
現地滞在が長くなると言語も上達していきますよ。
ボランティアだから自腹を切って生活する?
ボランティアだから無償だと思われがちですが、青年海外協力隊は生活費や住居費、国内手当がJICAから支給されます。
活動に必要なものを買いそろえるための支度料や、荷物を送るなど引っ越しにかかる移転料も支給があります。
詳しい金額は下の記事を参考にしてください。
青年海外協力隊員として活動している間は、自腹を切ることはほとんどありません。
自腹を切るのは、贅沢品の購入や任国外旅行くらいです。
また活動中に必要になった経費をJICAが現地業務費として支給することもあります。
※活動の経費は基本的に配属先が負担します。
最新の機材をJICAの支給で購入したけど、協力隊員が帰った後に現地の人が使いこなせない場合がよくあります。
または後に派遣された隊員に、配属先がまた機材を要求したりして、依存性が高まる可能性もあります。
そのため現地業務費はJICAと配属先の十分な話し合いが必要です。
青年海外協力隊のお金は政府開発援助(ODA)、つまり税金が使われています。
国のバックアップがあるので、生活費などの支給が止まることはありません。
お金について心配する必要はないです。
帰国後、就職先がない?
JICA協力隊|進路状況によると、
帰国した青年海外協力隊および日系社会青年ボランティアの76%が就職・現職参加の復職をしています。
でも新卒や特別な資格なしで参加した場合は就職ができるか不安になりますよね。
そんな方たちのために、JICAでは青年海外協力隊の経験者向けに進路開拓支援も行っています。
具体的な支援をいくつか挙げます。
進路相談カウンセラーによる相談受付
各県に担当の進路相談カウンセラーが配置され、就職や進学の相談を受け付けています。
履歴書や職務経歴書の添削、面接練習までサポートしてくれます。
これは新卒で協力隊に参加した隊員にとって、ありがたい支援ですよね。
進路相談カウンセラーは現職参加した隊員も利用できます。
国際キャリア総合情報サイト「PARTNER」
JICAが運営する「PARTNER」では、協力隊経験者向けの求人情報があります。
語学を生かすことのできる海外の求人から「まちおこし協力隊」など日本の求人まで、協力隊の経験が歓迎される求人情報が満載です。
もし海外でずっと働きたい気持ちがあれば、協力隊応募前にPARTNERをチェックしておいても良いかもしれません。
必要な言語、語学力、資格などの条件が満たせるように、協力隊の要請を選ぶというのも一つの手段です。
資格取得のための教育訓練手当
資格や技能の習得のための教育訓練手当という制度があります。
帰国後、進路開拓のための教育が対象になります。
教育にかかった費用の8割(上限20万円)が手当として支給されます。
大学などの教育機関だけでなく、通信教育などでも対象になります。
資格がなくて就職や進路に不安がある隊員には良い制度ですね。
そのほか多くの進路開拓支援があります。
- 就職に向けた勉強会の開催
- 国際ボランティア計画(UNV)にかかる費用負担
- NGO活動支援制度
JICAの支援をしっかり活用すれば自分に合った進路を選べます。
社会不適合者になる?
社会不適合者を
「社会になじめず、周りとうまく協調してやっていくことが困難な人」
とするならば
帰国後一時的に社会不適合者になる可能性が高いです…。(経験談)
なぜなら自己アピールが激しく、仕事も大雑把な外国の文化に2年間もいると、
集団行動や細かい決め事を守る日本の文化が苦しく感じられるからです。
しかし帰国すれば数か月で日本になじんでいきます。
就職に関しても76%が社会復帰をしているので、
「青年海外協力隊に参加したから社会不適合者になる」
というのは言い過ぎかなと思います。
協力隊経験者の中には再び海外で働く人もいます。
私が知っている協力隊経験者で、海外で働き続けている人は数名います。
その人たちに共通しているのは、
「自身の将来を考え、そのステップとして海外で働いている」
という事です。
日本社会になじめないから…という理由もあるかもしれません。
しかし、言葉や文化の壁があり、国籍も違う海外で仕事をすることは、相当の精神力と努力が必要です。
言葉も通じるし、安全で雇用が守られる日本社会の方が正直「楽」です。
結婚できない?
結婚できます。
協力隊参加前から付き合っていたパートナーや、協力隊同士、帰国してから出会ったパートナーと結婚しています。
青年海外協力隊に参加している人の年齢層が20代後半~30代なので、結婚を意識する人や家族から心配される人もいるでしょう。
しかし青年海外協力隊に参加する・しないに関係なく結婚する人はするし、しない人はしないです。
むしろ青年海外協力隊に参加した方が新しい出会いや人脈が広がります。
協力隊に参加する人は価値観が近くて経験した苦労も共感できるので、心から落ち着ける人に出会える確率が高くなりますよ。
まとめ:やめとくのはもったいない!青年海外協力隊は人生を彩る
- 派遣国は日本より治安が悪いがJICAと個人の安全対策で安全に過ごせる。
- 支給があるのでお金の心配はいらない。
- 就職は帰国隊員向けのサポートが活用できる。
- 社会不適合者にならない。
- 結婚できる。