- 青年海外協力隊は報告書や報告会ってあるの?
- 報告書や報告会はいつやるの?
- どんな事を書くのか知りたい。
こんな疑問に向けて、この記事では青年海外協力隊のボランティア報告書と報告会について紹介します。
- 元青年海外協力隊員
- 子ども専門の理学療法士
- ヨルダンの支援学校とリハビリ施設に配属
- 30代女性
2年間で報告書の提出は5回、報告会は2回行うことが義務付けられています。
この記事を読めば、
- 報告書の目的
- 報告書と報告会タイミング
- 報告書の大まかな内容
が分かります。
また、私が報告書に書いたことも簡単に紹介しているので、2年間の活動経過を知りたい人は参考にしてください。
技術移転にこだわり過ぎて、自滅していく内容です…。
それでは詳しく解説していきます。
ボランティア報告書の提出が2年間で5回ある
青年海外協力隊は派遣中の2年間に、ボランティア報告書を5回提出をします。
目的は以下の3つです。
- 活動の自己評価
- 事業関係者との情報共有
- 日本国民への情報開示
報告書は原則、一般公開されます。
報告書5回を提出する時期は以下の通りです。
報告書 | 時期 |
---|---|
第1号 | 赴任後3カ月 |
第2号 | 赴任後6カ月 |
第3号 | 赴任後12カ月 |
第4号 | 赴任後18カ月 |
第5号 | 赴任後24カ月 |
派遣1年目は3カ月ごと、派遣2年目は半年ごとにJICA事務所へ提出します。
派遣期間が1年~1年6カ月未満の場合は3回提出
派遣期間が1年~1年6カ月の場合、報告書の提出は3回です。
報告書 | 時期 |
---|---|
第1号 | 赴任後3カ月 |
第2号 | 赴任後6カ月 |
第3号 | 帰国月 |
第3号報告書の内容は、第5号報告書のテーマで作成します。
派遣期間が1年6カ月~1年9カ月未満の場合は4回提出
派遣期間が1年6カ月~1年9カ月未満の場合、報告書の提出は4回です。
報告書 | 時期 |
---|---|
第1号 | 赴任後3カ月 |
第2号 | 赴任後6カ月 |
第3号 | 赴任後12カ月 |
第4号 | 帰国月 |
第4号報告書の内容は、第5号報告書のテーマで作成します。
現職参加の教員はこのパターンが多いです。
報告書の文字数とテーマは決められている
報告書の文字数とテーマは決められています。
具体的な文字数は以下の通りです。
要約 | 800文字以内 |
本文(5テーマ) | 1テーマ500文字以内 |
JICAへの要望・提案 | 500文字以内 |
次に報告書の本文について、大まかなテーマを紹介します。
第1号報告書(赴任後3カ月)
- 活動地域及び配属先の概要
- 所属する部局の概要
- 配属先のニーズ
- 活動計画準備状況
- 派遣国の印象
初めての報告書には配属先の状況や大まかなニーズを中心に書きます。
私の第1号報告書を振り返って
私の配属先は特別支援学校のリハビリテーション部門でした。
同僚は、当時30代半ば・男性理学療法士が一人いました。
要請内容に書かれていたことは、主に以下の2つです。
- 子どもへのリハビリ提供
- 同僚への技術移転
私の第1号報告書では以下のようなことを報告しました。
- 配属先の利用者数が少ないから、増やしていきたい
- 同僚は理学療法技術を知りたいと言っている
- 同僚と協力して仕事を進めていきたい
1週間にリハビリで通ってくる子どもは2~3人しかいませんでした。
しかし「これから頑張っていくぞ!」という気合が感じられる報告書を書いていました。
初々しさ全開。
第2号報告書(赴任後6カ月)+活動計画表の作成
- 活動計画の説明
- 活動計画策定に向けた配属先との意見交換
- 配属先の動向
- 派遣国の人々との交流
- その他特記事項
活動や現地の言葉にも慣れてくる赴任後6カ月には、同僚と一緒に今後の活動計画を立てます。
活動計画は様式に沿って表を作るのですが、日本語版と英語版が必要になります。
英語版の活動計画表は配属先の所長のサインをもらい、日本語版の活動計画表はJICA事務所に提出します。
活動計画表の様式は専用サイトからダウンロード、またはエクセルデータがJICA事務所から配布されます。
また報告書の項目にある、「その他特記事項」というのは、以下の7項目から好きなものを選んで書きます。
- 日本と派遣国の違い
- 派遣国の生活習慣
- 派遣国の食事
- 旅行
- 任地の特産品
- 他事業との連携
- 任地での広報活動
第3号、第4号報告書も同じく「その他特記事項」で、これらの項目から選んで書きます。
私の第2号報告書を振り返って
私の第2号報告書では以下のようなことを報告しました。
- アラビア語が聞き取れるようになってきた
- 配属先の利用者数が増えない…
- 同僚が求めている事が分からない
配属先にいても理学療法士としての仕事が少ないことを主に書いていました。
また配属先の所長や同僚は、何か考えがあってJICAにボランティアを要請したはずなのに、
何も求められてないんだけど、なんで?
と、まだまだ受け身の姿勢をとっている私の様子が、第2号報告書から感じられました。
赴任当初、「理学療法技術を知りたい」と言ってきた同僚は、利用者が来ても私に押し付けて、別室で雑談をしていることがほとんどでした。
赴任後6カ月は自分が置かれている状況に薄々気づいてくる頃。
第3号報告書(赴任後12カ月)+活動状況表の作成
- 活動の進捗状況
- 着任後1年時点の活動結果と課題、解決案
- 現地支援制度活用計画
- 社会格差に関する所見
- その他特記事項
赴任から1年が経つ第3号報告書では、
- 1年間の振り返り
- 今後の活動の方向性
を配属先と再確認します。
活動状況表とは、活動計画表を作成した赴任後6カ月時点から今までの活動の成果を、自己評価するものです。
また、赴任後12か月目は中間報告会もあります。
私の第3号報告書を振り返って
私の第3号報告書では以下のようなことを報告しました。
- 同僚の勤務態度が悪い(勤務中の居眠りやゲーム、リハビリ手技の失敗を患者のせいにする)
- 同僚は何も求めていない
- 利用者増加を図るためのチラシ作戦
同僚に対しての不満が爆発している様子で、なかなか厳しい内容を書きました…。
「技術移転をしなければ!」と私は義務感があったのに、肝心の同僚は私に何も求めていない事が分かって、虚しかったのだと思います。
協力隊を終えた今思えば、同僚への技術移転にこだわりすぎてたな…という感想です。
また、利用者が増えないので、配属先の案内をチラシにして、お店や興味を持ってくれそうな人に配ることを私一人でしていました。
利用者が少なくて仕事が無い!と同僚に相談したら、
「日本人は手先が器用だし、作業療法士をすれば?」
と転職をまじめに提案されたのも今は良い思い出。
※理学療法士と作業療法士は、資格も仕事内容も別物です。
第4号報告書(赴任後18カ月)
- 活動の進捗状況
- 課題解決に向けた取組み・進捗・結果
- 活動事例の紹介(成功例・失敗例)
- 派遣国の人々の変化
- その他特記事項
赴任から18か月(1年半)の第4号報告書では、活動の結果について述べるなど、活動の終了を意識した報告書を書きます。
私の第4号報告書を振り返って
私の第4号報告書では以下のようなことを報告しました。
- 同僚への技術移転をあきらめる
- 新しい活動場所では、患者数が増えた
- チラシ作戦失敗
何も求めない同僚への技術移転はあきらめて、私の担当患者のリハビリに専念することにしました。
また、配属先の利用者が少なかったので、2年目からは別の施設でも活動するようになりました。
失敗例では、第3号報告書で書いた「チラシ作戦」は利用者増加に至らず、効果が無かったことを報告しました。
仕事は自分で探して行動しなければ見つからない!と実感したのは任期残り1年を切った頃でした。
第5号報告書(赴任後24カ月)+活動結果表
- 活動結果
- 要請の妥当性
- 配属先による活動成果の活用見込み・今後の支援の必要性
- ボランティア経験について
- 帰国後ボランティア経験を社会に還元・発信するための方法と計画
第5号報告書は2年間の協力隊生活最後の報告書です。
- 配属先に協力隊は必要かどうか
- 隊員がいなくなっても、配属先は成果を継続できるか
など、活動の総合評価を報告書に書きます。
また、活動結果表には
- 活動の成果
- 残された課題
を記載し、配属先の所長にサインをもらいます。
赴任後24か月目は帰国報告会もあります。
私の第5号報告書を振り返って
私の第5号報告書では以下のようなことを報告しました。
- 配属先に協力隊派遣の必要性を感じない
- 私の担当患者はリハビリの効果があった
- 青年海外協力隊の経験はとても有益だった
配属先の利用者数の少なさや、同僚は何も求めていないことから、「協力隊派遣の必要性はない」と報告しました。
しかし、青年海外協力隊としてヨルダンで過ごした2年間はとても有益だったということも書いています。
例えば、人種差別や男女差別などは本当にストレスを強く感じました。
しかし、差別される側の立場になって怒りの感情を自分自身が持つことは、日本にいれば絶対に味わえない貴重な体験でした。
2年間で「自分は日本人である」ということを嫌というほど自覚します。
報告会は2年間で2回ある
青年海外協力隊員は2年間で2回、報告会を行います。
報告会のタイミングは以下の通りです。
- 赴任後12か月目の中間報告会
- 赴任後24か月目の帰国報告会
これまでの活動について、PowerPointでスライドを各自が作って発表します。
持ち時間は、中間報告会では15分以内、帰国報告会では20分以内です。
報告会はJICA事務所で行われ、JICAスタッフやJICAボランティアが集まります。
報告会は英語で行う国もある
報告会は基本的に日本語で行いますが、英語で行う国もあるそうです。
アフリカ圏などで英語が生活言語の国では、英語でプレゼンテーションを行った隊員もいます。
オンライン英会話NOAH Online English Lessonでは、ネイティブ講師に英文の添削をしてもらえます。
海外からの受講も可能ですので、気になる人は以下の記事をご覧ください。
まとめ:報告書や報告会は自分の活動を見直す機会
青年海外協力隊員の報告書や報告会について解説しました。
活動を文章化すると自分の考えが整理され、以下のことが明確になっていきます。
- 活動の方向性
- 難しさを感じる事
- 支援を放棄すべき事
活動がスムーズに進むことは無く、2年間という時間の制限があるので、無理だと思うことはどんどん切り捨てていかなければいけません。
私の感覚では10個挑戦して1~2個が、現地の人の反応が得られたり、活動として成立していく感じです。
なかなか上手くいかないものです…。
報告書は2年間で5回も提出しないといけないので、「大変だな」と思う人もいるかもしれません。
しかし、青年海外協力隊として活動していると、書くネタには困らないので意外とすんなり書けます。
定期的にある報告書や報告会は、自分の活動を見直すのにちょうど良い機会になると思います。
この記事が参考になったら幸いです。